部屋が物で溢れかえってしまう原因の一つに「ためこみ症(ホーディング障害)」という治療が必要な精神疾患があります。この病気はある日突然発症するわけではありません。日常生活の中にその初期症状つまり「前兆」として少しずつ現れてきます。このサインに本人や周囲が早期に気づくことが問題の深刻化を防ぐ上で非常に重要です。ためこみ症の最も中心的な症状は「物を捨てることへの持続的な困難」です。初期段階では以下のような形で現れます。まず「全ての物に特別な価値を見出してしまう」ことです。他人から見れば明らかにゴミやガラクタにしか見えない物、例えば古いチラシや壊れた電化製品、空き箱などに対しても「これは貴重な情報源だ」「いつか修理して使えるかもしれない」「何かの入れ物として役に立つ」といった独自の理由をつけて手放すことを拒みます。物を捨てるという提案に対して過剰に防衛的になったり怒り出したりするのも特徴的なサインです。次に「物の獲得への過剰な欲求」が見られます。必要ないにもかかわらずフリーマーケットやリサイクルショップで次々と物を買い込んだり、ゴミ集積所から他人が捨てた物を拾ってきたりする行動がこれにあたります。物を手に入れることで一時的な満足感や安心感を得ようとするのです。また部屋の状態としては「物の分類や整理が極端にできない」という特徴が現れます。物はただ無秩序に積み重ねられていくだけでカテゴリーごとに分けたり棚に収納したりといったことができません。その結果部屋の中が徐々に混沌とした状態になっていきます。そしてこれらの行動によって生活空間が狭くなり本来の機能(寝る、食事をするなど)が果たせなくなってきても、本人にはそれを「問題だ」と認識する能力(病識)が乏しいことが多いのです。もしあなた自身やあなたの身近な人にこれらのサインが見られる場合、それは単なる「片付けが苦手な人」ではなく専門的な支援を必要としているサインなのかもしれません。
物が捨てられない!ためこみ症の初期症状