ゴミ屋敷で犬が飼育されている状況は、単に飼い主が片付けられないという問題に終わらず、動物の福祉に対する深刻な「ネグレクト」、すなわち飼育放棄の一形態として捉えるべきです。そこには、飼い主として果たすべき責任が完全に欠如している現実があります。犬を飼育するということは、単に餌を与えることだけではありません。清潔で安全な住環境の提供、適切な食事と水の供給、定期的な健康管理と医療ケア、十分な運動と精神的な刺激、そして何よりも愛情を持って接することなど、多岐にわたる責任が伴います。しかし、ゴミ屋敷の飼い主は、これらの基本的な責任をほとんど果たせていないケースがほとんどです。不衛生な環境は犬の健康を害し、適切な食事や水が与えられないことは栄養失調や脱水症状を引き起こします。病気になっても病院に連れて行かず放置したり、予防接種や去勢・避妊手術を受けさせなかったりすることも、ネグレクトの典型的な事例です。散歩に連れて行かない、遊んであげないといった行動の欠如は、犬の心身の発達に大きな悪影響を与え、ストレスや問題行動の原因となります。多くの場合、ゴミ屋敷の飼い主は、自身の生活すらままならない状況にあり、犬の世話どころではないという状態に陥っています。しかし、その状況がどれほど切迫していても、飼育放棄が正当化されることはありません。犬には生きる権利があり、人間がその命を預かる以上、その責任から逃れることは許されないのです。社会全体でこの問題に対する意識を高め、飼い主が責任を果たせない状況にある場合は、早期に行政や動物保護団体が介入し、犬の命と尊厳を守るための手立てを講じることが求められます。飼い主の無自覚や無責任が、罪のない犬たちの命を危険に晒しているという現実から、目を背けてはなりません。