光工事の宅内調査や配線において、最も多い「工事延期・拒否」の理由は、通信会社側の不備ではなく、住人側の「導線確保」の失敗にあります。多くの人が誤解しているのは、作業員は「自分の荷物を動かしてまで作業をしてくれる」という思い込みです。基本的に、作業員はお客様の所有物に勝手に触れることは禁じられています。万が一、動かした家具が破損したり、荷物の中から重要な書類を紛失したりといったトラブルを避けるためです。したがって、作業が必要な壁面やコンセント、入線口、天井点検口などが荷物で塞がれている場合、作業員は「お客様で動かしてください」と告げ、それが短時間で終わらない量であれば、その日の工事は中止となります。この導線確保において特に重要なのは「脚立が立てられるかどうか」です。光ファイバーは天井付近の配管を通すことが多いため、二メートル近い高さの脚立を安定して開けるスペースが必要になります。床にゴミが散乱している、あるいは不安定な雑誌の束などが積まれている場所では、脚立の足元が不安定になり、転落事故の危険があるため作業は行われません。また、玄関から作業現場までの最短距離だけでなく、作業員が工具を取りに車へ戻る際の往復も考慮した通路の確保が必要です。この通路が狭すぎると、持ち運ぶ機材が壁に接触し、住人にとっても不本意な傷をつける原因となります。部屋が汚い自覚がある場合、まずは玄関からメインの設置場所までの「動線」をメジャーで測り、幅七〇センチ程度の空間を完全に空けることを目標にしてください。そこにある物を一時的にベッドの上や、使っていない別の部屋に山積みにしても構いません。とにかく「作業員の移動と足場」を最優先で確保することが、工事拒否という最悪の事態を回避するための唯一にして最強の防衛策です。当日、作業員が到着した時に「あ、これならすぐに始められますね」と言ってもらえるような状態を目指しましょう。